知的資産経営とは、自社の強み(知的資産)をしっかり把握し、それを徹底的に活用しようという経営手法です。
知的資産とは
「知的資産」とは特許やブランド、ノウハウなどの「知的財産」を含み、さらに組織力、人材、技術、経営理念、顧客等とのネットワークなど、財務諸表には表れてこない目に見えにくい経営資源の総称を指します。「知的資産」は企業の本当の価値・強みであり、価値創造の源泉です。
知的資産経営を薦める理由
特に中小企業にお薦めします。
その理由は、経営資源の乏しい中小企業が、競争力を維持し、成長発展を遂げるためには、自社の強み(知的資産)を明確に把握し、それを徹底的に活用し、外部環境に対応する必要があるからです。
こんなところが薦めています!
経済産業省、近畿経済産業局、中小企業基盤整備機構等の国の機関が推奨しています。
また銀行等の金融機関が積極的に取り組んでいます。
知的資産経営の第一歩
まず自社に存在する強み(知的資産)の棚卸しが必要になります。それをドキュメント化したものが「知的資産経営報告書」です。
知的資産経営報告書
「知的資産経営報告書」とは、企業が持っている技術、ノウハウ、人材などの重要な知的資産を、どのように活用して企業の価値創造につなげていくかという、自社の知的資産経営の取り組みをまとめ、その内容を開示する役割をもつ報告書です。
また、知的資産を3種類に分類して記載しています。
知的資産の分類
人的資産
従業員が退職時に持ち出す資産
例)イノベーション能力、ノウハウ、経験、柔軟性、学習力、想像力、モチベーション等
組織資産
従業員が退職時に企業内に残留する資産
例)組織の柔軟性、文化、システム、手続き、マニュアル、データベース等
関係資産
企業の対外的関係に付随したすべての資産
例)供給会社との関係、顧客ロイヤリティ、顧客満足度、イメージ、金融機関との交渉力
古賀先生【MERITUM プロジェクトによる知的資産の3分類】
知的資産経営報告書のキモ
1.ストーリー化(価値創造ストーリー)
ストーリー化(価値創造ストーリー)は、自社の経営理念・哲学を根幹に、組織的な取組や仕組みを通して、いかにして顧客提供価値(顧客の真のニーズ)につながるか図式化したものです。
2.アクションプラン(KGI・KPIへ落し込み)
外部環境のチャンス(リスク)を認識し、自社の強み(知的資産)でどの様に獲得(回避)するかを行動計画・数値目標(KGI・KPI)に落とし込んだものです。
知的資産経営報告書を作成し、知的資産経営を開示・評価するメリット
企業が持続的な利益を目指す「知的資産経営」を続けていくためには、その企業の取り組みをステークホルダー(取引先、顧客、株主・投資家、従業員、地域社会など)に 認知・評価してもらうことが重要です。
そのため企業は、財務諸表だけでは十分に表現することができない「知的資産」や知的資産を活用した経営手法について、ステークホルダーに対して情報開示を行う必要があります。
それでは、知的資産経営を開示・評価することでどのようなメリットがあるのでしょうか。
1.価値創造プロセスのストーリー化
過去から現在における企業の価値創造プロセスだけでなく、将来の価値創造プロセスを明らかにすることで、企業の価値創造の流れを説明することができます。
2.新規開拓顧客向け
- しっかりした会社としての好印象、信頼を持ってもらった
- 会社の中身が伝わった
- 取引決定のスピードが速くなった
- 展示会、商談で活用でき、引き合いがあった
3.取引先・協力企業
- 当社をより詳しく知って頂いた
- 当社の営業姿勢を理解いただき、関係強化が図れた
- 安心感が得られた
- 商談時に役立った
4.金融機関向け
- 金融機関からの理解が深まった、作成を評価された
- 新しい金融機関から積極的アプローチがあった
- 融資にあたって、決定材料ではないが、判断の資料として役にたった
- 金融機関から新しい取引先を紹介された
5.従業員向け
- 従業員の理解が進んだ(会社の強み・弱み、会社の方向性、歴史・理念等)
- 共同で作成したため、経営者の理念が伝わった
- 経営幹部、従業員に経営者の思いが伝わった
- 会社に対して誇りを持つことが出来た
- どんな事が顧客に喜んで頂いているかを意識するようになった
- 自社の技術やノウハウに気付き、学習意欲が向上
- 経歴の浅い社員にとって勉強になった
- 各部署の業務のモチベーションアップにつながった
2.~5.のデータの出典元:近畿経済産業局「知的資産経営報告書の評価・認証手法に関する調査研究報告書」